|
2008年07月01日付『NIKKEI.NET』
社民党の内紛、揺れ動く政情−オーストリア
昨年一月に発足したオーストリア大連立政権は崩壊の様相を深めてきた。その直接の主因は社会民主党の内紛だ。グーゼンバウアー首相は先日、党内の突き上げを回避するために党首をファイマン運輸相に譲ったが、政権パートナー国民党の圧力を受け、選挙公約をことごとく放棄し、首相のポストにしがみつくグーゼンバウアー氏に対する党内の批判は依然、強い。同党は七月七日、緊急党幹部会を開くが、そこでグーゼンバウアー首相の解任要求が飛び出す、といったうわさも聞かれる。
解任寸前、グーゼンバウアー首相
オーストリア大連立政権は社民党と国民党から成る。社民党は独社民党(SPD)の姉妹政党であり、国民党は独キリスト教民主同盟(CDU)の姉妹政党だ。ドイツの大連立政権と違う点は、オーストリアでは社民党が第一党として政権を主導していることだ。
百日間を超える連立交渉の末、昨年一月十一日、社民党と国民党の二大政党の連立政権が発足したが、社民党と国民党間で路線をめぐる争いが繰り返され、政権は何度も危機を経験した。両党はもともと、その政治信条が違う。経済界を支持基盤とする国民党と、労組を支持基盤とする社民党では、税改革、福祉問題まで政策が異なる。社民党の閣僚が社会福祉案を提案したとしても財務省を握る国民党出身の閣僚に拒否される、といった具合だ。社民党幹部でウィーン市長のホイプル市長も今年初め、「早期総選挙の実施もはや排除できない」と言わざるを得なくなったほどだ。
グーゼンバウアー首相は二〇〇六年十月の選挙戦では、学費の廃止から健康医療改革まで多くの公約を掲げて戦ったが、国民党との連立政権発足後、それらの公約は国民党の反対もあってことごとく廃案となっていった。そのため、社民党の支持基盤であった労組、学生からは「公約違反」を追及する声が強まっていった。「首相のポストを手に入れるために、国民党の要求に屈した」といった厳しい批判も飛び出してきた。
一方、国民の支持を失った首相を抱える社民党内からは「このままでは州選挙に勝てない」といった危機感が日増しに高まっていった。その懸念が現実化したのは六月初めに実施されたチロル州選挙だ。同選挙で社民党は10ポイント以上得票率を失う歴史的な敗北を喫し、新党「リスト・フィリッツ・ディンクハウザー」にも抜かれて第三党に後退したのだ。
社民党はその数日後、緊急幹部会を開いて対応を協議した。首相解任要求を恐れたグーゼンバウアー首相は党首ポストをファイマン運輸相に譲る妥協案を提示し、党幹部会では一応承認されたが、政策の実行力に乏しい首相に対し、党内では依然、反発が強い。社民党は七月七日、党幹部会を再開するが、そこでグーゼンバウアー首相の解任要求が出されるのではないか、といったうわさまで流れている。
大連立政権が崩壊の危機に直面するたびにグーゼンバウアー首相とモルテラー副首相(国民党党首)を大統領府に呼び、政権運営で両党の連携を要求してきたフィッシャー大統領も今回ばかりは「お手上げ」といった状況だ。
そのような状況の中で先月二十六日、グーゼンバウアー首相が突然、「欧州連合(EU)の新基本条約(リスボン条約)の改正の際は、国民投票を実施すべきだ」と爆弾発言をした。同国ではリスボン条約は議会で批准されたばかりだ。グーゼンバウアー首相はこれまで「条約の批准は国民議会で実施する。国民投票は必要ではない」と主張してきた。その首相が「改正の場合、国民投票を行うべきだ」と、従来の立場を百八十度変えたのだ。親EU路線の国民党関係者は「国に責任を持つ首相の発言とは到底考えられない。連立政権の合意にも反する」と激しく反発している。
同国の政界情報筋は、「グーゼンバウアー首相は国民投票を要求してきた野党側にエールを送る一方、国民党との正面衝突も辞さない覚悟だろう。しかし、国民ばかりか党内でも支持を失ってきた首相には、事態を大きく改善できる道はあまり残されていないのではないか」と分析し、「連立政権の崩壊、早期総選挙の実施はもはや回避できない」と予想している。
2008年07月01日付『世界日報』
EU新条約否決のアイルランド「来年に再投票」 スロベニア外相
欧州連合(EU)議長国スロベニアのルペル外相は京都市内で日本経済新聞記者と会い、アイルランドが6月の国民投票でEUの新基本条約「リスボン条約」を否決したことについて「来年に再投票が行われるだろう」と述べ、再投票で批准される可能性があるとの見方を示した。条約の内容は修正せず、全加盟国での早期批准を目指す姿勢を明確にした。
EUの政治、経済統合を促進するリスボン条約は、大統領ポストの新設や効率的な政策決定を定める内容。加盟27カ国すべての批准が発効の条件で、アイルランドを除く7カ国が未批准国。同国では主権制限への懸念などから否決された。
2008年06月29日付『東京新聞』
一歩さがって二歩進む
今月中旬、ヨーロッパに「激震」が走った。経済統合に続き政治統合をめざす欧州連合(EU)の新基本条約「リスボン条約」がアイルランドの国民投票で批准が拒否され、EUの今後の計画が頓挫したからだ。
加盟国国民による基本条約の拒否は、今回に限ったことではない。二〇〇五年にリスボン条約の前身、憲法条約がフランスとオランダの国民投票で批准を拒否された。東欧諸国の加盟に合わせたニース条約も、アイルランドの国民投票で拒否され、再度の国民投票で承認された経緯がある。
EUは問題が起こるたびに首脳会議などで論議を尽くし、妥協を重ねて難局を乗り越えている。その歩みは「一歩後退、二歩前進」で、カメのようにのろくとも着実に前へ前へと進んできた。
今回の事態打開については、十月の首脳会議で協議される。これまでの例から推して、各国首脳のどんな英知が結集されるかと注視している。
かつて欧州の最貧国だったアイルランドは、EUから最大限の支援を受けて、欧州有数の富裕国に転じた。その国民の間では、リスボン条約が複雑でよく理解できないとの声が多かった。
EUは近い将来、バルカン諸国の加盟を実現する意向だが、さらなる拡大により、国民生活がどうなるかとの不安も聞かれた。
現段階では、新たな基本条約を急がず、各国国民の理解を得るよう努める十分な時間が必要であろう。
2008年06月27日付『NIKKEI.NET』
新条約否決のアイルランド、EU支持率は高水準 欧州委が調査
欧州連合(EU)の新条約「リスボン条約」の批准を国民投票で拒んだアイルランドで、EU支持率がなお高いことが欧州委員会の世論調査で明らかになった。EU加盟を支持する人の割合は全体の73%で、加盟27カ国中の2位。EU加盟で恩恵があったと考える人も82%に上る。欧州委は新条約への知識不足や中小国の埋没懸念が国民投票での否決につながったと判断。アイルランドの再投票をにらんで対応策を協議する方針だ。
EU支持率が30%の英国とは大きな開きがあり、アイルランドは大陸欧州との協調路線に期待できるとの見方が強い。欧州委が同国のみで行った別の緊急調査では国民投票で反対票を投じた人の80%がEU支持を表明した。特に若年層や主婦の間で反対意見が強く、欧州委ではリスボン条約の理解を浸透させたうえで再投票を促す案が浮かんでいる。
|