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「国民投票法案は再び継続審議となる模様・・」──こうした記事を読み、山場はまだ先、来年の話と傍観を決め込んではいけない。確かに法律の制定は来春になるだろうが、その中身はまちがいなく今臨時国会中(12月15日まで)に確定する。つまり、今まさに山場を迎えているということだ。改憲の是非を決める国民投票という主権者にとって極めて重要な制度の設計に関与する最後の機会。今、私たちがなすべきことは何か。
自・公両党及び民主党は、先の通常国会において、国民投票法案をそれぞれ衆議院に提出。その後は与野党の提案者が意見表明をしただけで継続審議となっていたが、衆院憲法調査特別委員会(中山太郎委員長、以下「憲法特」と略する)は10月26日に与党案と民主党案の双方の提案理由説明と質疑を行い、実質審議入りした。
同委員会ではこの臨時国会において、いくつかの主要な項目に関し専門家・有識者から「参考人」として意見を聴取し懇談を行なうための「小委員会」を設けることを決め、すでに「公務員・教育者の国民投票運動規制など」(11月2日)、「放送広告の規制など」(11月7日)「憲法審査会その他国会法改正部分など」(11月16日)をテーマに開会している。
この小委員会は毎回3時間にわたって行なわれ、毎回、厳しいやり取りの連続。どこかのタウンミーティングとは違って「やらせ」などなく、「理に適ったルール」を真摯に探る場となっている。
もう一つ、憲法特の新たな動きとして「審議ペースの加速化」がある。これまで、週1回毎週木曜日のみ開かれてきた憲法特だが、11月に入ってからは火曜日に小委員会を開き、木曜日にその議論・報告を受ける形で本委員会を開く週2日制となった(火曜日の午前中に小委員会を開き午後に本委員会とするパターンもある)。
年が変わり統一地方選挙、参議院選挙が近づいてくると、政党のぶつかり合いの影響を受けることになり「理に適った法案作り」がやりにくくなる。それで、何とか年内中に法案の中身を確定したいという中山太郎委員長の強い意志が働いていると思われる。
◆メディアがらみの重要課題
未だ委員の間で合意に達していない項目がいくつかあるが、そのなかで国民の[投票行動=投票結果]に最も大きな影響を及ぼすと考えられるのは、マスメディアにかかわるルール設定だ。論点を具体的に明示しよう。
[1]賛否両派(個人から政党を含む団体まで)が、テレビ又はラジオを通じて「賛成あるいは反対への投票を訴える広告(スポットCM)」を出すことを規制すべきか否か?
[2]テレビ番組やラジオ番組のキャスター、パーソナリティーが、国会が憲法改正の発議を行なった後に、番組内で「改憲の是非」について自らの意見を表明することを規制すべきか否か?
[3]賛否両派が、新聞や雑誌など活字媒体を通じて「賛成あるいは反対への投票を訴える意見広告」を出すことを規制すべきか否か?
こうしたことを話し合うために開かれた小委員会(11月7日開会)に参考人として出席することになった私は、事前に放送メディアに関係する友人らに個別に考えを聞いたのだが、[1]の規制すべきか否かに関して、彼らの意見は真っ二つに分かれた。
(A氏=雑誌発行人・テレビ広告主でもある)「報道規制と広告規制とは分けて論じなくてはならない。賛否を訴えるテレビの広告は、同量使用が保証されるならいいが、資金力のある9条改憲派の広告ばかりが流されるのであれば(法案にあるような)投票1週間前ではなく、改憲の発議と同時に全面禁止すべし」
(B氏=テレビの報道番組の元キャスター)「報道は規制しないが広告は別というのはおかしい。広告であってもその規制は言論・表現の自由、国民の知る権利を侵すもので、たとえ期間限定であれ意見広告の禁止などあってはならない」
(C氏=テレビの討論番組のディレクター)「新聞への意見広告と違いテレビのスポット広告では投票権者の理性ではなく感性に訴えるものにならざるを得ない。発議後何ヶ月かの運動期間中に番組や集会などで『討議デモクラシー』を重ね理性に訴えても、最後にテレビで広告が繰り返されると、ムード、感覚が支配する投票行動をとってしまう」
(D氏=テレビドキュメンタリーの制作者)「金のある側が資金力にモノを言わせ、意見広告を多用する状況になったとしても、国民が判断することが国民主権の本質だ。国民は馬鹿ではないし、たとえ馬鹿だとしても、その国民に主権がある限り、自ら判断し決定する権利を奪ってはならない」
尤もな意見ばかり。こうした主張を[護憲対改憲]という構図でとらえる人がいるかもしれないので明らかにしておくが、4氏の「9条」に対する姿勢はいずれも肯定だ。
さまざまな意見を聞いた後、考え抜いた末に私が出した[1]についての結論は以下の通り。
▼テレビの意見広告については事業者が良識に基づき自主的に制限することが望ましい。だが、それが為されないのであれば、法による規制もやむを得ない。
▼こうした制限又は規制は「改正の発議から投票終了」までの期間に行なうべきである。
▼ただし、賛否両派が同量の広告を出す機会を得られるのであれば、一定期間内に一定量の広告放送を行なうことは認めてもかまわない。
その場合でも期日前投票開始以降は流すことを認めてはならない。
◆日弁連および民放連の主張
7日の小委員会には、民間放送連盟、日本弁護士連合会からともに2人ずつが参考人として出席したが、彼らは上記の「B氏」と同じ理由から法規制に断固反対するという姿勢だ。
与党及び民主党は、すでに、投票期日一週間前から広告放送を禁止することを盛り込んだ法案を出しているが、もし民放連などが自主規制に関する具体策を作り明示すれば、こうした規制を法案から削除する可能性がある。
だが、民放連の山田良明参考人は、小委員会の席でテレビの意見広告(スポットCM)を一切流さないという形での自主規制は、現時点では考えていない旨の発言を行なった。となると、やはり法律によってある程度規制するしかないのか。
◆主権者が理に適った提案と要求を
さて、みなさんはどう考えられるだろう。これらの問題について友人らと話し合っていただきたい。その際、、護憲派あるいは改憲派に有利不利という基準ではなく、どういうルールが理に適っているのかという視点で考えてほしい。そして、郵便やEメールなどで憲法特に直接意見を届けていただきたい。
この委員会は他の多くの委員会と違い、市民の意見・要望が合理性に富んだものであれば、それを法案に反映している。現にこれまで、院外からの声の高まりにより「虚偽報道に対して罰則を設ける」とか「外国人の運動を禁止する」といった項目が削られ、今また与党案の中に盛り込まれている「公務員等・教育者の地位利用による国民投票運動の禁止」といった項目が削られようとしている。
今後もここで紹介したメディアにかかわる問題をはじめさまざまな項目で、市民の意見が法案に反映される可能性は十分にある。ただし、「締め切り時間」が迫っているということだ。
◆メディアに携わる者が具体的な提案を
国民投票運動において、賛否両派によるテレビの広告放送、新聞の意見広告を認めるのか。また、テレビ、ラジオのキャスター、パーソナリティーが、「改憲の是非」について発議後に意見を表明することをどう考えるのか。
私も含め、報道やメディアに携わる者が、こうした問題について、これまでしっかり考え、話し合うという営みをしてきたただろうか。私たちは、努力を怠ってきたという事実を認め反省しなければならない。
こうしたルール作りは、議員や学者あるいは民放連といった組織に委ねるのではなく、ジャーナリスト個々人が議論のイニシアチブをとり、具体的な提案をなすべきだったのに、学び、考え、話し合うことを怠ってきた私たちにはそれができなかった。それどころか、大多数の者が無関心でいた。
このまま法制化されるのを傍観していいのか。筑紫哲也、田丸美寿々、松本方哉、辛坊治郎、永六輔、道上洋三ら現在キャスター、パーソナリティーを務めている各氏を含む広範なジャーナリストが急ぎ一堂に会して議論を深め、民放連や憲法特に対して具体的な提案をなすことを強く望む。
※『週刊金曜日』に掲載された記事の抜粋です。
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