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「原発」国民投票 実現の流れ
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   更新:2011/05/28
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「原発」をどうするのか。この極めて重大な案件は、行政府や立法府が勝手に決めることではなく、主権者である私たち一人ひとりの国民が決定権を握るべきです。
任意のグループが行う「ネット投票」ではなく、国会が認めた公式の「原発」国民投票を実現することは決して夢物語ではありません。多数の主権者が望み、求めれば、実施されるのは当然の道理です。
 
「原発」国民投票 実現の流れ
(12年3月25日を国民投票期日とした場合)
今井 一


 憲法改正の手続きを定める国民投票法は2007年5月に可決され2010年5月から完全施行されている。この法案の審議過程(06~07年)で民主党は、当時の与党の案に対し国民投票の対象が「憲法改正に限定されている」ことを反対の理由に挙げた。憲法改正以外の重要な案件について任意・諮問的に行う一般的国民投票についても盛り込むべき、と主張したのだ。
  民主党が最終的に示した案(2007年4月10日提出の衆院修正案、同年5月9日提出の参院民主案)は、国民投票の対象を
(1)憲法改正の対象となりうる問題
(2)統治機構に関する問題
(3)生命倫理に関する問題
(4)その他国民投票の対象とするにふさわしい問題として別に法律で定める問題
の4つに拡大するというものだった。
  結局与党案が成立することになるが、その2年後、民主党が政権を奪取した後も、かつて自らが主張した一般的国民投票の制度を導入する気配はない。それどころか政府も民主党も、一般的国民投票の制度化への議論を一切重ねてはいない。したがって、彼らが言うところの「(4)その他国民投票の対象とするにふさわしい問題」について、どのようなテーマを想定しているのかも定かではない。
  とはいえ原子力発電の問題(をはじめとする日本のエネルギー政策をどうするかという問題)は、市民の生活・生存に直結する意味でこれよりほかに国民投票の対象とするにふさわしい案件はない。
  これは「憲法九条」を改めるか否か、つまり「軍隊を持つのか持たないのか」「交戦権を認めるのか認めないのか」に匹敵する重要課題である。改憲の是非が国会の議決で最終的に決まるのではなく国民投票によって決められるのと同じように、「原発」についても政府や議会ではなく、主権者である国民が決定権を握るべきではないか。

 多数の主権者が望み、求めれば、実施されるのは当然の道理であり、この公式の国民投票を実現することは決して夢物語ではない。想像力を働かせてもらうために、「原発」国民投票の実現スケジュールをかなり具体的に示したい。

2011年 5月~7月 実現を目指す市民グループが「原発」国民投票法案(市民案)作成のための意見交換会を、東京、名古屋、大阪など各都市で開催。
2011年 7月 「原発」国民投票法案(市民案)発表
2011年 9月 「原発」国民投票法に関する議論が各界、各政党で始まる。
2011年11月 「原発」国民投票法案が、衆議院に提出される(超党派の議員立法)。
         (「原発」国民投票法案を審査する、衆院特別委員会)
              ↓
          (衆院本会議)
              ↓
         (参院特別委員会)
              ↓
          (参院本会議)
              ↓
    
2011年12月 「原発」国民投票法 成立
2011年12月24日 「原発」国民投票法 公布・施行
2011年12月25日 国会の議決により、国民投票の期日(12年3月25日)が告示される。
2011年12月~2月 国民投票広報協議会が、「広報放送」と「広報広告」の準備、「国民投票公報」の原稿作成等を行う
2012年 3月11日 スポットCMの規制 (投票期日まで)
2012年 3月11日 期日前投票(投票期日の前日まで)
2012年 3月15日 国民投票公報の配付期限
2012年 3月25日 国民投票期日


 選挙には公職選挙法、自治体で行われる住民投票には住民投票条例というルールがあるように、「原発」国民投票を実施するためには、そのルールとして、別途に国民投票法(原子力発電所の是非をめぐる国民投票の実施手続を定める法律)を制定しなければならない。
 当然、これは唯一の立法機関である国会で作られ、制定されることとなるが、最終的にはそうであっても、この重要なルールづくりを彼らに丸投げすることはやめよう。日本初の国民投票のルールは、主権者である私たちが、よく学び議論を重ねたのちに草案を作り、それを国会が採用する形にもっていきたい。
 その草案作りの作業は、2011年の5月から始まっている。
 ここでは、私もメンバーの一人となっている市民グループ[みんなで決めよう「原発」国民投票]が練り上げた案(以下「市民案」)を紹介する。
 「市民案」の主たる項目と議論のポイントは次の5つ。

[1] 投票権者をどうするか
 選挙では、投票権者は「二〇歳以上の日本国籍を有する者」となっているが、「原発」国民投票は公職選挙法に則って実施するのではないので、独自のルール設定ができる。それで、一つは年齢、一つは永住外国人の扱いが議論の対象となる。
 「市民案」では議論の末に、義務教育を修了した日本国籍を有する者、および永住外国人が投票に参加できる、とした。成年被後見人、一定の選挙犯罪を犯した者について投票資格を認めるのも特徴である。

[2]国民投票に付す設問をどうするか
 下記二つの項目に関して個別に問い、各項目の選択肢から一つを選択する方式をとる。
(1)原子力発電所の新規建設についてどう考えますか?
[認める] 
[認めない]
(2)今ある原子力発電所について、これをどうすべきだと考えますか?
[これまで通り運転する]
[順次閉鎖していき、二〇二〇年までにすべて閉鎖する]

[3]実施決定から投票日までの期間
 国民的議論の期間を一年以上とるべきだという意見もあれば、いつまた事故が起こるか知れないので一カ月以内に投票をという意見もある。諸外国の実施事例からも考えて、60日前後が妥当だと考えるが、「市民案」では、「本法律の施行後速やかに、両議院の議決によって、60日以後90日以内で定める」とした。

[4]自由なPR活動を保障
 選挙では禁じられている戸別訪問も可能だし、チラシやポスターについても自由に作って、自分の家はもちろん、許可を取れば、他人の家の壁に貼ってもいいし喫茶店や美容院などに貼り出してもかまわない。デモやパレード、ネットでの宣伝、主張もOK。とにかく、「国民投票運動」及び「国民投票案件に対する意見の表明」は、原則自由とする。

[5]投票結果の政策への反映について
 第2章のスウェーデンの事例紹介の時に示したが、現行憲法下で実施される「原発」国民投票は法的拘束力のない「諮問型」。したがって、実施前に、立法府の長と行政府の長が、「投票結果を重要な参考材料とするが、国家機関を法的に拘束しない」旨の政治的約束をして行なうことになる。すでに第1章で解説したように、現在、わが国では憲法改正の是非を問う国民投票のみが法的拘束力を有する。「原発」国民投票に法的拘束力を持たせるためには、「国会は、国権の最高機関であり唯一の立法機関」(四一条)といった憲法の条項について、先に改正しなければならない。

それでは「市民案」を紹介しよう。

原子力発電所の是非をめぐる国民投票の実施手続を定める法律案骨子

【基本的考え方】
1.本法律案は、憲法改正の手続きを定める国民投票法(平成19 年法律第51 号)をもとに、任意・諮問型国民投票制度の一類型として制度設計する。
2.本法律案は、衆参両院の憲法審査会(法案審査のための小委員会を置く)、又は特別に設置される委員会において審査する。
3.本法律案は、超党派の議員による発議を想定する。内閣がこの法律案を提出するものではない。
4.本法律案は、予算を伴う。衆法では50 名以上、参法では20 名以上の賛成を要する。

一.意義・目的
本法律案は、日本国内における既設の原子力発電所の稼動を継続することの是非、及び原子力発電所を新規に建設することの是非(以下、「国民投票案件」という。)に関して、国民投票を実施するための手続、その他必要な事項を定める。
想定される案件
 下記二つの項目に関して個別に問い、各項目の選択肢から一つを選択する方式をとる。
(1)原子力発電所の新規建設についてどう考えますか?
[認める]
[認めない]
(2)今ある原子力発電所について、これをどうすべきだと考えますか?
[これまで通り運転する]
[順次閉鎖していき、二〇二〇年までにすべて閉鎖する]
二.投票期日
本法律の施行後速やかに、両議院の議決によって、60 日以後九○日以内で定める。
三.投票権
1.年齢
義務教育を修了した日本国民は、当該国民投票の投票権を有する。
2.外国人
義務教育を修了した永住外国人は、当該国民投票の投票権を有する。
3.その他投票人名簿の調製、期日前投票、不在者投票及び在外投票の手続等に関し、必要な規定を置く。
四.国民投票広報協議会
1.構成、議事手続(委 員)衆院議員10名+参院議員10 名(計20 名)
各会派の所属議員数に応じ、按分する。
(定足数)各議院から7名以上
(表決数)出席議員の3分の2以上(特別多数決)
2.事務内容
(1)国民投票公報の原稿の作成
(2)投票記載所に掲示する国民投票案件の要旨の作成
(3)国民投票案件広報放送、国民投票案件広報広告に関する事務(=政党に与えられる無料枠は認めない)
(4)その他、国民投票案件広報事務
3.「国民投票公報」の内容
(1)国民投票案件及びその要旨
(2)国民投票案件に関する賛成意見、反対意見及び参考意見
4.「国民投票公報」の配付
すべての有権者に対し、投票期日の10 日前までに配付する。
五.国民投票運動・規制
1.国民投票運動の定義
国民投票運動を「国民投票案件に対し、賛成又は反対の投票をし、又はしないよう勧誘する行為」と定義し、「国民投票運動」及び「国民投票案件に対する意見の表明」は、原則自由である旨明記する。
2.国民投票運動の規制(罰則)
(1)投票事務関係者の国民投票運動規制
投票管理者、開票管理者、国民投票分会長、国民投票長
(2)特定公務員の国民投票運動規制
中央選管の委員、中央選管の庶務に従事する総務省の職員、選管の委員及び職員、
国民投票広報協議会事務局の職員について規制
裁判官、検察官、会計検査官、公安委員会の委員、警察官、収税官吏及び徴税の吏員は可
(3)公務員・教育者(地位を利用した国民投票運動のみ禁止)
・違反した場合でも罰則は設けない。但し、懲戒等の行政処分はありうる。
・公務員法等の政治的行為の制限規定につき、適用を除外する。
(4)スポットCM(=国民投票運動のための放送広告)(※2)
国民投票期日より30 日以内は、何人も禁止とする(違反行為に対する罰則は設けない)
(5)戸別訪問、文書図画、広告、ウェブサイト(ホームページ、ブログ、ツイッター)開設については、規制を設けない。
(6)買収・利害誘導罪組織的多数人買収罪、利害誘導罪、買収目的交付罪
(7)投票の自由・平穏を害する罪
職権濫用による国民投票の自由妨害罪、投票の秘密侵害罪、投票干渉罪、投票箱開被罪、
投票管理関係者・施設等に対する暴行罪等、多衆による国民投票妨害罪、投票所・開票所・
国民投票会場等における凶器携帯罪
(8)投票手続に関する罪
詐偽登録罪、虚偽宣言罪、詐偽投票罪、投票偽造・増減罪、代理投票等における記載義務
違反、立会人の義務を怠る罪
六.投票及び開票
1.投票案件
(略)
2.投票用紙
投票用紙は、投票案件ごとに調製する。
3.投票方式
・投票案件ごとの、個別投票とする。
・投票用紙にあらかじめ印刷された選択肢番号の一つを、○印で囲む。
・白票、複数記載、他事記載は、無効票とする。
4.開票手続、結果の告示
開票管理者、国民投票分会、国民投票会、中央選挙管理委員会による結果の告示に関する規定を置く。
七.国民投票無効訴訟
憲法改正国民投票法に定める三つの無効事由(投票管理執行上の手続違反、投票の自由妨害、集計の誤り)に係る瑕疵は、政治過程で治癒することが基本的に可能であり、国民投票の効果が憲法改正の場面とは異なることから、規定は設けない。
八.その他
必要な規定の整備を行う。

(※1)併合修正案とは、○六年に与党(自民・公明)と民主党がそれぞれ提出した国民投票法案について、両案が共通する部分はそのまま、両案が相違する部分は、どちらかの案を選択、修正し、与党が再提出した案のこと。できるだけ多くの部分につき民主党案を採用することにより、民主党の賛成を得る目的があった。

(※2)もっとも、スポットCMについては、賛否の勧誘を伴わない「紛いもの」の危険性がある。○五年、EU憲法条約批准の是非をめぐり欧州各国で国民投票が実施されたが、「ひとつのヨーロッパに『賛成』」など、意見表明の形をとったCMが横行し、市民に少なからぬ影響を与えた。私が参考人を務めた、参議院憲法調査特別委員会(○七年五月八日)でもこの点の危険性を指摘している。


 
 
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