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埼玉県北本市で実施された住民投票について
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   更新:2013/12/24
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 12月15日(日)埼玉県北本市では「新駅建設の賛否を問う」住民投票が行われました。今回の住民投票の市長・議会・住民の動きは、実施決定から投票後まで、「市民自治」の観点から非常に興味深いものでした。

〈この住民投票のポイント〉
① テーマは「市費でJR高崎線の新駅を建設するか否か」
② 市長も議会の多数派も「建設推進」だった。
③ 市長が住民投票を提案、議会も同意して条例が制定され実施された。
④ 結果は建設反対票が多数を制し、市長は計画を白紙撤回すると表明。


埼玉県北本市で実施された住民投票について

 12月15日(日)埼玉県北本市では「新駅建設の賛否を問う」住民投票が行われました。今回の住民投票の市長・議会・住民の動きは、実施決定から投票後まで、「市民自治」の観点から非常に興味深いものでした。

 まず住民投票のテーマについて、JR高崎線の北本駅・桶川間の新駅建設についての賛否を問うものでした。この新駅は、地元が設置を求める「請願駅」であり、整備費用は全額自治体が負担するというものです。およそ30年前から議論されてきましたが、今年7月JR東日本から「新駅設置の正式協議に向けた要望書の提出ができる環境が整った」と回答があり、住民投票に掛けられることになりました。今回事業費72億円を市税で賄って建設するかが大きな論点でした。

 北本市議会では、09年には市議会で新駅設置を求める決議を全会一致で決議、今年9月定例会では議員提出による新駅設置の決議案を賛成多数(12対7)で可決。
 また石津賢治市長は11年4月の市長選で新駅設置を公約に掲げて当選しました。
 市長と議会の多数派は新駅建設賛成であり、住民投票を行わずに計画を進めることが可能な状況でした。

 しかし、9月定例会にて石津市長は自治基本条例(10年施行)に基づき、市長の発議による「北本市における新駅建設の賛否を問う住民投票条案」を提案し、賛成多数(16対3)で可決されたのでした。
 なお、この住民投票条例は、投票資格者は20歳以上の有権者、成立要件はなく、投票率に関係なく開票されるというものでした。12月8日告示、15日投開票となりました。
 この議会にて、市長は、一票でも多い投票に従って対応したいと考えていると答弁していました。

 11月から北本市による市民説明会がすでに9回行われていましたが、告示がせまった12月2日市議会本会議にて新駅建設推進派議員により住民投票条例改正案が提出されました。この改正案は、投票率が50%を下回った場合は投開票を無効とする成立要件、いわゆる50%ルールを設けようとしたものでした。提案理由は「住民投票の結果次第で、新駅建設が立ち消えになってしまう恐れがある。これまで建設に向けて市議会で重ねてきたさまざまな議論や議決が無意味になってしまう」というもの。
 投票率50%を下回ると無効にするこのルールを設けてしまうと、多数を取れないと思った方が投票に行かずに、住民投票自体を無効にさせるボイコット運動が起きる可能性があり、本来望まれる賛否両派による活発な議論が行われなくなります。
 新駅設置賛成派多数の議会でしたが、この改正案は3対16の賛成少数で否決されました。

 投票は12月15日。
 設問は「新駅設置建設について、あなたがよいと思う選択肢の上の○をつける欄に○をつけてください。」
 選択肢は賛成・反対を選ぶものでした。
 期日前投票での出足もよく、最終的に投票率は62.34%(前回市長選は53.82%)となり、投票結果は賛成8353/反対26,804の3倍以上の差をつけて反対多数となりました。

 投票翌日、石津市長は、「今回の結果を受けまして、この度市民の皆様にご提示した新駅建設計画については白紙とし、今年度中に行うとしていたJR東日本への要望書の提出は行いません。」とコメントしました。

 賛成派の市長が自分の望む結果と違う結果が出る可能性があるのにもかかわらず、住民投票を提案し、その結果が自分の意思とは違っても受け入れたこと、また議会も新駅設置賛成多数であるにもかかわらず、住民投票条例案を最低投票率による成立要件を設けることなく賛成したことは画期的でした。

 また成立要件がないことで、ボイコット運動は起きず、市民が能動的に投票に向け活動し、投票所に足を運び、投票率は前回の市長選より上がりました。

 今回の住民投票について、北本市民がブログを立ち上げたりして、情報を発信していました。そのなかで、住民投票自体に疑問を投げかけている意見がありました。例えば、市長は住民に責任を丸投げしたのではとか、反対派の中にもいろんな意見があり、単純に「反対」という一面だけで民意を表せられない、自分の都合でしか投票しない、この案件は住民投票にふさわしくないのではと言った意見です。これは、賛成・推進派からの提案されたルールに則って行われた住民投票であるため、北本市民はそう感じたのかもしれません。


賛成派、反対派が作ったチラシ。

 情報室に関わるもの、また直接請求を経験したものとしては想像できない意見でした。ただ成立要件を設けなかったこと、市長が一票でも多いほうに従うと明言していたことは、市民にとって公平でした。それゆえ、賛成・推進派から提案された住民投票に対して、北本市民もきちんと向き合えたのではないでしょうか。




 
 
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