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生駒市市民投票条例制定の足取り
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   更新:2014/07/08
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今年6月定例会で成立した生駒市市民投票条例について、当事者として体験した議員の視点からその成立の経緯を記します。
なお、生駒市市民投票条例成立に向けた取り組みについては、以前も運営委員コラムにて6回に分けて掲載しています。合わせてお読みください。

常設型住民投票条例の制定に向けて~奈良県生駒市民の取り組み by 塩見牧子
(その1)
(その2)
(その3)
(その4)
(その5)
(その6)

生駒市市民投票条例制定の足取り
塩見牧子(生駒市議会議員)

 2014年(平成26年)6月24日午前10時前の生駒市役所5階。赤い絨毯が敷き詰められた議会フロアには、議会事務局職員のほか市長部局の男性職員も数メートル間隔で本会議場を取り囲むように立哨。その合間を掻い潜るように議場に入りました。

 一か月前。6月定例会に山下市長が「生駒市市民投票条例案」を提出すると報道されるや、周辺はにわかに騒がしくなりました。駅前で条例制定の反対署名が展開され、直接訪問、電話、ファックス、手紙などあらゆる手段を用いて反対意見が届けられました。
 反対の主な理由は二つ。一つは永住外国人等への投票資格付与は外国人参政権につながり、国益が損なわれるというもの。もう一つは、住民投票そのものが議会制民主主義の否定であるというものです。

 生駒市では、市民団体が常設型住民投票条例の制定を求めていたこと、また山下市長も2期目の選挙でマニフェストにそれを揚げたことから、2010年(平成22年)2月より生駒市市民自治推進会議において具体的な条文の検討が始まりました。
 しかし、2009年(平成21年)9月定例会に市議会が「慰安婦問題に関する意見書」を全会一致で可決して以来、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)が抗議行動を繰り返していました。駅前や市役所前で街宣活動を行うのは序の口、議会フロアに乗り込んで拡声器を使って「売国云々」とがなり立て、無許可で議員控室に押し入って食事風景をビデオ撮影したことさえありました。また、ネットで生駒市の動きを流していたこともあり、2010年(平成22年)11月に「生駒市市民投票条例素案」に対するパブリックコメントを募集すると、匿名や市外在住者、生駒市役所を居住地とする「生駒太郎」氏も含め1641人から意見提出がありました。市民に身近な条例であるということを抜きにしても、ほかの条例案だと1件も意見がないこともありますし、あっても5件程度ですから、やはりこれは異常な多さです。
 さらに、2011年(平成23年)には、条例素案を検討する「市民自治推進会議」の市民委員が、自宅前で在特会にヘイトスピーチを行われ、いっときは外出さえできなくなってしまうなど、事態は極めて深刻なものになりました。
 一方、平成22年9月ごろから住民投票に法的拘束力を持たせるという国の動きも出てきて、その動向を見守っていたこともあり、結局、「市民自治推進会議」からの報告書が市長に提出されたのは2012年(平成24年)1月でした。

 報告書が提出されてからも、条例案は議会に上がってくることのないまま2期目の市長任期を終えることになり、私も市長任期最後の定例会で条例提案についての考えを質し、「店晒しにするわけにはいかない。」との答弁こそ得ていましたが、具体的にいつ出すかは示されることはありませんでした。
 しかし、今年1月に山下市長も三選を果たし、また来年は議会の改選もあり、その後の顔ぶれによっては条例案を通せなくなる可能性もあると思われたのか、今回の提案となった次第です。

 生駒市市民投票条例案のポイントは以下の通りで、[国民投票/住民投票]情報室の推奨する案にほぼ合致したものとなっています。

●投票資格者:満18歳以上の日本国籍を有する者と永住外国人のうち3か月以上市の住民基本台帳に記録されている者、及び、在留資格者のうち5年を超えて市の住民基本台帳に記録されている者。
●発議者:市民(投票資格者総数の6分の1以上の連署をもって請求)と議会(議員の定数の12分の1以上の賛成者を得て提案し過半数の議決が必要)と市長(議決不要)
●成立要件:規定なし。賛否いずれか過半数の結果が投票資格者総数の4分の1以上に達した時、議会、市長、市民に尊重義務。


 議会では、主に(1)市民投票は議会及び議員の責任放棄である、また、(2)投票資格者に外国人を入れるべきではない、(3)市長の発議に際しては議決を要するようにすべき、の3点において反対意見が出ました。
 (3)の議決の必要性に関しては情報室でも見解が分かれているように、反対理由として納得しうるものですが、(1)、(2)に関しては、そもそも諮問型住民投票の政策形成過程における位置づけを理解していない(あくまで最終意思決定は議会にあり、市民投票は、政策決定の過程において住民意思を確認するツールにすぎないということが理解できていない)誤解に基づいています。わが市議会に限らずどこの議会にもあることですが、この基本的なしくみを理解せずに議決に臨む議員がいかに多いか!これは条例に賛成する議員も同じで、「議会制民主主義」という事実があるにもかかわらず「民主主義の基本は直接民主主義だ」という安易な表現で対抗しようとします。
 
さて、本会議の傍聴席にはいつもより多くの報道関係者、市民の傍聴がありましたが、これまでに送られてきた手紙やファックスの数を思えば「意外に少ない。」という印象でした。賛成、反対それぞれ3本ずつの討論が行われましたが、傍聴席からも怒号のひとつ飛んで来ることなく、議場に入る前のものものしい雰囲気からは拍子抜けするくらい粛々と議事は進行しました。採決の結果、賛成15、反対8で可決しましたが、歓声もなければ嘆息もなし。私語をしていた報道記者が議長から注意されただけでした。

 今、思えば、電話もファックスも大阪や東京の市外局番のものが多かったので、実際のところ、この手の過激な抗議行動をとる団体は、おそらくどこの自治体にでも出かけていくのでしょう。私も他自治体議会の議会報告会の様子を見にいくことが多いのですが、必ずといっていいくらい「自治基本条例」や「住民投票条例」を制定するな、という発言をするグループにお目にかかります。

 今後、常設型住民投票条例を制定しようとする他自治体議会においても、わが市と同じような状況が展開される可能性もありますが、大挙してその自治体に外国人が移住し住民投票を実施するなどと現実に起こりえない場面を想定して市民の意思表明の機会まで奪ってしまうようなことのないよう、ひるむことなく採決に臨んでいただきたいと思います。


 
 
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