6-1.はじめに
第5回「中間報告」をどう読む?では、12月16日に法務省が公表した、民法成年年齢の引き下げに関する中間報告書の内容について検証しました。
パブリックコメントも始まりましたので、意見を届けてはいかがでしょうか。(→こちら)
今回のテーマは「18歳国民年金加入論」です。国民投票法、民法などとは分野が違いますが、年金法制も形式的には年齢条項見直しの検討対象になっています。
6-2.年金のしくみ
年金といわれれば、大抵の人は「国民皆年金」を柱とする国民年金を連想します。が、日本の年金史を振り返ると、厚生年金から先にスタートしていることが分かります。まず海上労働者を対象とした「船員保険法」が(1939年)、続いて陸上労働者を対象とした「労働者年金保険法」が制定されました(1941年)。現在の「厚生年金保険法」は1944年に制定されたものです。
国民年金法の制定は1959年です。1961年4月から拠出型国民年金が実施され、現在に至っています。
そもそも年金制度は、何のためにあるのでしょうか。
表9 年金制度の分類
| |
(1)老齢 |
(2)障害 |
(3)遺族 |
被保険者資格 |
| 国民年金 |
老齢基礎年金 |
障害基礎年金 |
遺族基礎年金 |
第1号被保険者(国民年金法7I(1)) |
| 厚生年金 |
老齢厚生年金 |
障害厚生年金 |
遺族厚生年金 |
第2号被保険者(国民年金法7I(2)) |
年齢を重ねて就労することが不可能となったり、病気・ケガで障害を負ってしまったり、家族の大黒柱が亡くなってしまったりと、ライフステージにおいて、突然にして収入減に陥り、生活していくことが困難になることがあります。
この点、日本国憲法は国民の生存権(25条)を基本的人権として保障しています。国民の生活を守るのは国家の責務です。
不測の事態に備えて、リスクを分散させるのが年金制度です。個人が一定の保険料を国庫に納め、国家が財政を出動し、個人に年金として受給するシステムを確立しているのです。
表7をご覧下さい。国民年金、厚生年金において、(1)老齢、(2)障害、(3)遺族という3つの年金制度が用意されています。とくに国民年金から支給される年金を基礎年金といいます。サラリーマンは厚生年金、国民年金の双方に加入します。
老齢基礎年金のしくみを簡単に説明しましょう。
すべての個人は、20歳(※16)になると、被保険者の資格を得ます(強制加入です)。保険料として毎月、14,420円が徴収されます(国民年金法87条)。60歳になると資格を喪失しますが、20歳から60歳までの40年間、保険料を納付した場合(免除期間を含む)には、満額792,100円が支給されるしくみです。未納期間がある場合には、その分年金額が減額されます(=フルペンション減額方式)。
最低25年間、保険料を納付していること(免除期間を含みます)が法定要件です(国民年金法26条但書)。
他方、厚生年金は、70歳未満が被保険者となります(厚生年金保険法9条)。労働者としてであれば、20歳未満の者でも被保険者となります。20歳前に生じた障害の場合について、国民年金とは取り扱いが異なります。
太枠で囲った部分(表7)については、「子の加算」が18歳(に達する日以後の最初の3月31日まで)で打ち切られます。この点については後述します。
6-3.18歳引き下げの是非
厚生労働省は2008年7月11日、「社会保障審議会年金部会におけるこれまでの議論の整理」を公表しています。この資料の中で、成人年齢の見直しと国民年金制度の適用年齢について、加入年齢引き下げに賛成又は反対の立場から意見が整理されています。
《賛成論》
(1)成年年齢との整合性を保たないと、成人として保険料納付義務を果たすという自覚が生まれない。
(2)18歳から企業で働いている者に厚生年金が適用されていることとの均衡。
(3)基礎年金の掛け捨てを防ぎ、将来給付に反映させることができる。
(4)(反対論(1)への反論として)運用上は、学生納付特例(保険料免除措置)を申請する時期が、大学3年生から1年生に変わるということにすぎない。(※17)
《反対論》
(1)稼得の無い20歳の大学生から保険料を徴収することはおかしい。
(2)近年、大学進学率が上昇しており、22歳位までは学生である。適用上限年齢を見直す必要性は低い。
(3)保険料納付率の向上という点からすれば、むしろ適用年齢を20歳から引き上げた方が適切。
《その他の論点》
(1)適用下限年齢を18歳とするのであれば、適用上限年齢(60歳)も下げるのか。
(2)20歳前障害基礎年金、特別児童扶養手当についても見直すのか。
成人年齢法制の整序のため、私は、《賛成論》に与したいところですが、若年者の保険料未納問題(年金離れ)、消えた年金、消された年金など、年金制度に対する様々な不安が根強い限り、前向きに取り組むべき課題ではないと考えます。
年金保険であろうと、健康保険であろうと、そもそも公的な保険料を支払うだけの所得がない若者が増えています。若年者雇用政策の問題とワンセットで成案を得るべきです。社会保障審議会の議論を見守りたいと思います。
6-4.18歳打ち切り問題
年齢条項の見直しという点で、もう一つ論点があります。18歳打ち切り問題といわれるものです。
障害基礎年金、遺族基礎年金については、受給者に子がいれば、数に応じて年金額が加算されます(国民年金法33条の2)。
子の要件は、扶養関係にあることが前提で、
(i) 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間
(ii) 1級か2級の障害者で20歳未満
と定められています。これらも一応、見直し対象となる年齢条項です。
注
| (※16) |
年齢の計算に関する法律により、誕生日の「前日」に、20歳に達したことになります。 |
| (※17) |
ただし、学生納付特例の適用を受けても、保険料免除期間には算入されません。本人が申請し、社会人になってから保険料を後払いするシステムです。 |
参考文献
原 智徳 『年金法の解説(六訂版)』(一橋出版、2008年)
本沢一善 『日本の年金制度―家族法と社会保障を視野に入れて―』(学文社、1998年)
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