2006年もあと僅か。いかがお過ごしでしょうか。 第165回臨時国会が12月19日に閉会となり、国民投票法案[与党案・民主党案]はともに継続審議となりました。 今回は、憲法審査会についてです。憲法審査会に関する規定は、両案の条文上の文言、そして衆院憲法特委での法案修正に係る両案提出者の発言に根本的対立がありません。したがって、特に注記しない限り、両案共通の修正点を踏まえて解説します。 なお、憲法改正案の周知・広報を担当する国民投票広報協議会と混同しないようにして下さい。
2.憲法審査会とは?
憲法審査会は、下記ア.〜ウ.を所管する、衆参両院に設置される常設機関のことです。分かりやすく言えば、現在の衆参両院の憲法調査会の権限がversion upしたものです。 ア.日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について、広範かつ総合的に調査を行うこと 関連法制の範囲については、法案はとくに明示していません。衆参両院の他の委員会の所管と重複しないかが問題となります。 イ.憲法改正原案の審査と提出 憲法改正案の原案は、衆院議員100名以上の賛成があれば衆院憲法審査会に、参院議員50名以上の賛成があれば参院憲法審査会に発議(※1)されることになります。 憲法改正原案が妥当なものかは、それぞれの院の憲法審査会で審査されます。憲法審査会も憲法改正原案を提出することができます。 ウ.「日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案」(※2)等の審査と提出 国民投票法を改正するという場合、衆参両院の議院運営委員会が所管する国会法改正の場合も、これに含まれます。 与党案提出者は、ウ.に関連する検討課題として、予備的国民投票(日本国憲法の改正を要する問題及び日本国憲法の改正の対象となりうる問題についての国民投票制度)について、憲法審査会の所掌とすることを提案しています。 これに対して民主党案提出者は、予備的国民投票は憲法改正案そのものを対象とするものではないという前提で、国政問題国民投票の対象の問題として、さらに検討を加えることとしています。
3.衆参「合同」の憲法審査会
衆参両院の憲法審査会は、予算委員会等と同様、各々独立して活動することが原則です。 しかし、衆参両院で何の意思疎通もなく憲法改正原案を審査するのは効率的でなく、憲法改正発議要件のハードルが高いことからすれば、政治的効果が乏しいといえます。 したがって、両案提出者は、合同審査会で憲法改正原案の審査(あるいは、原案そのものを起草)が行われ、両院に勧告するプロセスが通例になっていくとの方向性を示しています。この場合の勧告は、拘束力のない大綱・骨子が示されるにすぎません。 合同審査会が設置されない限り、衆参両院の憲法審査会が独立・対等の立場で憲法改正原案の審査を行いますが、両院の統一的な意思形成が難航することも想定されます(憲法改正の発議には至りません)。この場合は、両院協議会を開いて、意見の調整を図ることが予定されています。 もっとも、両院協議会にはこんな問題があります。憲法96条1項前段は「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」を要件としており、原案がどちらかの院で否決された場合には、その段階で憲法改正発議が不成立と考えるのが憲法解釈として自然ではないかという意見があります。しかし与党案提出者は、このような場合でも両院協議会で調整可能と答弁しています。この点については、来年の通常国会でも議論になると思います。
4.憲法改正原案は直ちに審査される?
国民投票法が成立してからの[想定スケジュール]をご覧ください。憲法審査会に関する規定は、国民投票法本体部分より先行して施行されるのです。 それでは、この3年間に憲法改正原案の審査に直ちに着手してよいのでしょうか? 答えはノーです。共同修正では、3年間は上記ア.(調査)に専念し、イ.(憲法改正原案の審査と提出)は行わないことを法律の附則に書きこむことが予定されています。 なぜなら、(1)憲法審査会が常設機関として設置されること自体、憲法改正のスケジュールを政治的に加速させるものだとの批判があること、さらには、(2)衆参憲法調査会の報告書の内容を再検討し、国民に憲法論議を喚起すべきとの意見が与党案提出者から有力に主張されていることが背景にあるからです。 したがって、憲法改正国民投票が現実に行われるのは、3年後直ちに、それとも・・・。 (※1)議員以外の者が議案を提議することを「提出」といいます。 (※2)共同提出となった場合、法律案の名称がこのようになるというわけではありません。