こんにちは。1月25日、第166回通常国会が召集されました。参院にも憲法調査特別委員会が設置され、国民投票法成立に向けてのカウントダウンが始まりました。 今回は、「満18歳で成人?将来はこんな見直しも」と題し、国民投票法制の隠れた重要論点(?)である成人年齢法制の見直しについて解説します。
2.本則で18歳、附則で20歳?
まず、国民投票の投票権年齢について確認しましょう。 与党案(※1)、民主党案ともに、法律案の本則で、満18歳以上の日本国民に投票権を与えることとしています。 憲法改正案に対する国民投票の[承認/不承認]の効果は、その先何十年、何百年と続きます。憲法と時代を共有する多くの若い世代に、できるだけ投票資格を認めるべきであるという議論を反映したものです。 しかし、法律案の附則には、3年の経過期間中に公職選挙法の改正が行われ、選挙権年齢が満18歳以上となるまでの間は、国民投票の投票権も満20歳以上とすることが定められています。18歳であろうが、20歳であろうが、国民投票の投票権と国政選挙の選挙権を一致させるという前提で制度設計されています。 なぜなら、国会の定める選挙の際行はれる投票において国民投票が実施されることは、国民投票と国政選挙とが同一の有権者によって行われることを憲法が想定しているからです(憲法96条1項後段)。 国民投票法の成立後、直ちに公選法改正が行われるか、経過期間満了ぎりぎりになってそれが行われるかは分かりません。経過期間中は国民投票法本体が効力を有しないので、満20歳以上という現状において国民投票が実施されることはありません。 経過期間が過ぎても改正公選法が施行されていなかったらどうなるかという問題が提起されたことがありました。結論として、このような状態の下で「総議員の3分の2以上」という国会内合意が得られることはなく(憲法改正発議は行われない)、まずは改正法の施行を待つことになるでしょう。
3.成人年齢法制の現状
法律には、一定の年齢を基準として、国民に権利を付与したり、義務を課したりする場合があります。例えば、6歳未満の者は運賃が無償とされたり、30歳以上に参院選挙の被選挙権が与えられたり、65歳以上に年金が支給されたりと、さまざまです。 国民投票法制の議論を契機として、参政権に限らず、成人年齢法制を全体的に見直すべきではないかとの機運が高まってきました。 ところで、成人年齢法制とは何ですか?というメインテーマに関してですが、これを明確に定義したものは見当たりません。 もっとも、民法4条が、年齢20歳をもって、成年とすると規定していることから、
の総称と、一応定義しておきます。 (1)は、「20歳」と条文上定められていることから、形式的にはこちらが成人年齢法制の見直しの対象となりえます(図参照)。 (2)は、[成年者/未成年者]という区分を採っています。民法4条が18歳と改正されることにより、その影響を受ける法律です。 例えば、競馬法28条は「未成年者は、勝馬投票券を購入し、又は譲り受けてはならない」と定めていますが、民法改正によって、18歳で購入OKということになります。
4.見直しは進むか?
国民投票法案の附則には、「選挙権年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法令について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる」との、法制上の措置事項が定められる予定です。 論点は二つあります。 論点1−対象となる法律 まず、成人年齢法制の見直しの対象です。民法、公選法は問題ないにしても、その他の法令をどこまで対象とするかです。 若い世代に政治参加の機会を拡げる、あるいは市民社会の中で活動できる範囲を拡げることが容認できるとしても、同時に、飲酒、喫煙、大型車の運転免許、狩猟免許、国民年金の加入年齢なども一律に、形式的に18歳に引き下げていいのかどうか――ちょっと無理がある気がします(※2)。 刑法上の完全な責任非難を受けうる能力も、別の観点からの議論が求められます(少年法)。 論点2−所管委員会と所管省庁 成人年齢法制の見直しを、主として誰が所管するかという問題です。問題提起は衆院憲法特委からですが、主たる所管を決めているわけではありません。憲法審査会(→第3回)ですべて扱うことは困難でしょう。 法律は基本的に所管委員会(国会)と所管省庁(内閣)が決まっていますので、改正が進んだり進まなかったり、縦割り対応の弊害がでるおそれも否定できません。 成人年齢改正一括法(仮称)の制定は簡便なようで、意外と非現実的です。 成人年齢法制の見直しは、実社会に大きな影響を与えます。「はたちの献血」というコピーも、過去のものとなってしまうのでしょうか。 (※1) 衆院憲法特委(2006年12月14日)における、船田元・与党案提出者(自民)の締めくくり発言。 (※2) 国民年金加入年齢については、むしろ引き上げるべきとの意見があります(与党幹部)。