スポットCMとは、テレビやラジオで放送時間の指定なく放送されるCMをいいます。番組中に放映されるもの(PT/パーティシペーション)と、番組と番組の間に放映されるもの(SB/ステーションブレイク)があります。
スポットCMの契約料は、一般に明らかにされていません。
法案によれば、テレビやラジオを利用した国民投票運動のための広告放送と定義されるものが規制の対象です。「国民投票運動のための」というのがポイントです。
第6回で確認したように、国民投票運動と(国民投票運動に該当しない)一般的意見表明は違います。したがって、憲法改正案に対し[賛成/反対]を表明するだけのような、一般的意見表明のための広告放送は規制の対象ではありません。
但し、両者の区別は微妙な場合があります。
そもそも憲法21条は、民主主義社会、民主政の自由かつ健全な発展のため、表現の自由を保障し、優越的地位を与えるとともに(1項)、公権力による検閲を禁止しています(2項)。
もし、国民投票広報協議会のような公権力が、CM内容に直接立ち入って考査し、出稿の可否の判断をしたり、放映回数や時間帯などをコントロールすることになれば、それはまさに表現内容や表現方法に介入することになるか、少なくともその余地を与えてしまいます。
したがって、CM内容に中立的でない介入は憲法上疑義があるとされ、法制上は想定されていません。
スポットCM規制は、以下の三つの考え方に分けられます。
[1]全面法規制説
憲法改正の発議後、投票期日に至るまで、一切のスポットCMを法的に禁止する説です。
| 理由(1) |
スポットCMには、制作費・放映費ともに莫大な費用がかかる。資金量の多寡によって、憲法改正案に対する[賛成/反対]の意見広告がどちらかに偏るおそれがあり、視聴者の判断を誤らせる。 |
| 理由(2) |
消極的意味において(⇒CMが流れない)、[賛成/反対]の意見広告は対等となる(ゼロの公平)。 |
| 理由(3) |
自主規制に委ねるとしても、[賛成/反対]の意見広告が平等の量になることを担保できるわけではない。メディア業界にそれを求めるのは無理である(※)。 |
| 理由(1) |
意見広告主の広告表現の自由の保障を最大限保障すべきである。 |
| 理由(2) |
視聴者の知る権利を侵害するような規制はすべきでない。[賛成/反対]の意見広告は、自由市場において評価、淘汰されるべきものである。 |
| 理由(3) |
ネット広告、雑誌広告、交通広告などさまざまな媒体がある中、放送広告だけを規制の対象とする根拠が薄弱である。 |
| 理由(4) |
放送メディアには、放送法による規制だけでなく、CMに関する審査基準が定められ、適正に運用されている。国民投票CMに関しては、通常のCM考査とは違う基準を定める用意がある。 |
| 理由(1) |
投票期日直前に行われるCMは、扇情的効果で世論が流されることがある。熟慮のための、一定の冷却期間が必要である。 |
| 理由(2) |
投票期日直前に行われるCMに反論をしようとしても、それに十分な期間が確保できない。 |
| 理由(3) |
一定期間禁止することは、スポットCMを放映できる期間を限ることに他ならない。間接的に総量規制効果を及ぼすことができる。 |
スポットCM規制は、広告主の表現の自由の保障、憲法改正案に対する[賛成/反対]意見広告の量的平等の確保、スポットCMが視聴者に与える影響等、さまざまな判断基準・要素を勘案して決せられる問題です。
与党案、民主党案ともに、[3]折衷説に立っています。国民投票の期日前7日に当たる日から国民投票の期日までの間に、何人もスポットCMを行うことはできません(与党案106条、民主党案104条)。本条違反の場合でも、罰則はありません。
より総量規制効果を上げるために、与党案は投票期日14日前までに延ばす旨の修正がなされる予定です。
民主党案については、投票期日14日前までに延ばすか、発議後は全面禁止とすべきかということについて、さらに修正が検討される予定です。
(※) 一度に3つの憲法改正案が発議された場合を想定してみます。ある広告主は、A案は賛成、B案とC案は反対という内容のCMを、別の広告主はすべて賛成のCMを、さらに別の広告主はC案だけ賛成するCMを放映しようとしている場合など、[賛成/反対]意見広告の量を平等に調整することはかなりの困難が伴います。また、広告主の数に当初からアンバランスがあった場合、メディアの自主規制で量的平等を確保することにも疑問が呈されています。