こんにちは。今回は「買収はダメ?」と題し、国民投票買収を禁止する意義と、実際に規制されるケースについて、複雑な買収罪規定を読み解きながら考えていきます。 選挙買収と国民投票買収は、何が同じで、何が違うのでしょうか・・・。
2.買収とは? 本当にダメなの?
選挙買収は犯罪です。投票をカネで買うという行為自体が反社会的であり、選挙の公正に重大な影響を及ぼすことから、罰則を以て禁止されています。 しかし、国民投票と選挙は性格が異なります。国民投票では、選挙のように人を選ぶものではありません。「候補者」が有権者に対して投票を依頼するという図式ではありません。法律で定められた「運動員」もいません。 また、憲法改正案の[承認/不承認]を左右するだけの買収が大々的に行われることがあるのかどうか(買収をする意味や効果があるのかどうか)、疑問があるところです。 例えば、職場仲間で居酒屋談義をしながら、憲法改正案について話が盛り上がり、誰かが「今度の国民投票でこの案に賛成してくれたら、今日はおごる」と言った場合、選挙であれば、買収罪に問われる可能性があります。 他方、国民投票の場面まで規制すべきかどうか、憲法について自由闊達な議論を盛り上げ、公権力はそれを阻害すべきでないという考えに立てば、規制(罰則)は抑制的であるべきということになります。 もっとも、上記のような日常的な例ではなく、それが大規模に行われ、国民の投票意思に大きく影響するような悪質なケースまでも野放しにしては、国民投票の自由と公正を害するおそれを生むことにもなりかねません。 したがって、買収に該当するケースを限定するため、与党案にのみ買収罪(組織的多数人買収罪、利害誘導罪、買収目的交付罪)が規定されています(すべて、3年以下の懲役若しくは禁錮、又は50万円以下の罰金に処せられます)。昨年12月の段階で、構成要件をより厳格にするべく、条文案の一部修正が検討されています。 民主党案は、もともと買収罪を置かないという立場を採っていますが、与党修正案で処罰範囲が限定されたものになっているかどうか、さらに検討を行うこととしています。
3.組織的多数人買収罪
「若しくは」「又は」という法令用語を解きほぐし、本罪の構成要件を図解してみます。
上記いずれかにつき
(又は) (1)+(2)+(3)に加えて、
に成立します。 国民投票運動において意見の表明として通常用いられないものに限るとの限定は、例えば、駅前の街頭演説会などで配布されるであろう、うちわ、ポケットティッシュ、ボールペンなどの安価な物品が本罪の対象にならないようにする趣旨です。 つまり、本罪は、処罰範囲が拡大しすぎないよう、買収者の行為態様からも、対価となる物からも、厳格に縛りをかけているのです。上記のような例では当然のこと、街頭演説の場で、多数の通行人にティッシュを配ったとしても、本罪の構成要件に該当しないことは明らかです。
4.その他
利害誘導罪は、投票人との一定の利害関係の下で、投票を誘導することを禁じています。 買収目的交付罪は、買収、利害誘導を行う目的で、国民投票運動をする者に対して金銭の交付等をした場合に成立します(予備行為と位置づけられます)。 「買収はダメ?」と尋ねられれば、ダメと答えるしかありませんね。推奨されるものではありません。