こんにちは。今回は「過半数の承認と投票用紙への記載方法」です。これはかつて、与党案と民主党案で考え方が大きく対立した論点でした。両案がどのような理由(根拠)に基づいていたか、それがどのように修正されていったかを中心に解説します。 なお、過半数の承認は、憲法96条で定められている要件であること、投票用紙への記載方法はあくまで法律事項であることを区別して理解する必要があります。
2.与党案
与党案は、有効投票総数の過半数を以て、国民の承認が得られたものとし、投票用紙には、憲法改正案に賛成であれば「○」を、反対であれば「×」を自書する、という考え方に立っていました。この場合、白票は無効票になります。分母にはカウントされません。 有効投票総数を基準とし、このような投票方式を採るのは、無効票は憲法改正案に対して[賛成/反対]のどちらともいえないこと、また、記号式投票方式である以上、賛成「○」、反対「×」というのが社会通念上最も合理的な記載方法であることなどを根拠にしています。 2001年11月に公表された憲法調査推進議員連盟(中山太郎会長)の案と同様です。
3.民主党案
民主党案は、投票総数の過半数を以て、国民の承認が得られたものとし、投票用紙には、憲法改正案に賛成であれば「○」を自書し、反対であれば白票を投ずる、という考え方に立っていました。与党案とは違って、白票は反対票です。無効票も分母にカウントされます。 投票総数を基準とし、このような投票方式を採るのは、(1)憲法の英語原文(all votes cast thereon)に忠実な解釈であること、(2)憲法96条には過半数の「承認」とあり、「賛否」とは書いていないので、「賛成」か「賛成でない」か、を問うことが本質である、との考えに拠っています。つまり、白票(=反対票)も、他事記載等による無効票も、「賛成でない」票ということでひと括りに考えるのです。
4.修正合意は?
投票箱に入っていない票(=棄権票)を分母に加えないという点では、与党案、民主党案ともに共通しています。投票所に行って投じられた一票と、投票に行かないで何の意思も示されない一票とが、同じ扱いを受けることは妥当でないからです。 与党案と民主党案は、どのようにして修正合意に至ったのでしょうか。 これは、二つの観点が重要です。 まず、第一に、無効票をどう減らすかということです。無効票がゼロに近づけば、投票総数≒有効投票総数という関係になります。 また、投票人の多様な投票意思に確実に対応する記載方法はどんな方式が考えられるかという観点です。民主党案によれば、無効票は反対票と同じ扱いになりますが、反対意思があれば白票を投じたはずであり、これは新たに民意をつくり出すことになり不当であるとの批判がされてきました。 そこで、与党案の修正として、 投票用紙には予め、「賛成」「反対」の文字を記載しておく。 投票人はいずれかに「○」を自書するか、他方を「×」を自書するか、二重線等で消す。 という新たな提案がなされています。 賛成する場合には、「賛成」欄を「○」で囲むか、「反対」欄を「×」もしくは二重線等で消せばよいのです。出欠はがきの返信の要領です。 無効票を限りなくゼロに近づけるという制度設計を踏まえて、過半数の意義は、投票総数の過半数(憲法改正案に対する賛成の投票の数及び反対の投票を合計した数)と改定されています。無効票を限りなくゼロに近づけるという、立法者意思の強い現れではないかと思います。 民主党も、この修正提案でいいのかどうか、今後検討することとしています。 さらに、一度に複数の憲法改正案が発議された場合、投票用紙も当然に複数調製されることになりますが、ある案だけについての投票意思を示したくないという場合には、投票所において棄権の意思表示ができることを制度的に担保しておくべきではないかとの提案があります。
5.電子投票になったら
以前、私のブログで書きましたが、憲法改正国民投票は初回から電子投票が導入されていると思います。 投票所に行くとタッチパネル画面があり、ある案に対する[賛成/反対/(棄権)]の画面に対し、どれかを指で押すと確認画面が現れ、[OK]を押すと、次の案の投票に進んでいくというイメージが湧いてきます。電子投票システムにおいて、無効票(白票、他事記載等)はありえないでしょう。 投票用紙に自書するという制度設計は、幻に終わってしまうかもしれません。