衆議院憲法調査会会長、日本国憲法に関する調査特別委員会委員長として、憲法論議の発展に尽くし、立憲政治の指南役としてリーダーシップを発揮した中山太郎・衆議院議員の著書『実録憲法改正国民投票への道』が刊行された。 本書は、序章及び全五章から構成される。憲法改正の手続きを定める国民投票法の合意づくりが始まった第163回国会(2005年11月)以降の衆院特別委員会を中心に、時系列的に、事実が記され、評価が述べられている。制定過程を通じて、政党、関係議員の動きをこれほど客観的に詳述し、論点を専門的に解説した文献は他にない。 そもそも主権者である国民こそ、国民投票(憲法改正案を承認するかしないかの投票)という手続きを経て、社会契約の合憲的変更を行い、国のかたちを最終的に決定する権限を有する―「国民主権」を現実化するものとして国民投票法の制定の意義はいまさら繰り返す必要もない。中山氏は、このような国民主権立法に際し、公正・中立な立場を貫き、護憲・改憲という枠組みを超えた、幅広い院内合意の上での法整備を目指してきた。第三章「政局」とのたたかい、第四章「党内反発」とのたたかい、では、中山氏ならびに氏を支えてきた与野党理事たちの苦悩が如実に描き出され、同法の合意形成に向けられた真摯な努力をうかがい知ることができる。 また、中山氏の公正・中立な委員会運営につき、随所で紹介されており、興味深い。楕円形会議室の設定、ベル・ネームプレートの導入は、自由な円滑な会議を理想とする中山氏の発案によるが、深大な人徳、温厚な人柄が実によく描き出されている。中山氏のそうした政治姿勢は、いまや政界では党派を超えて、学界からも幅広く、評価されているところである。 中山氏が最後に述べているように、いわゆる「3つの宿題」について憲法審査会で活発な議論を重ねることが急務である。とりわけ、選挙権年齢、民法成年年齢の引下げの問題は、国民生活に深大な影響を及ぼすものである。問題をひたすら放置するのではなく、立法府でしっかりとした討議が必要である。 立憲政治を発展させる憲法論議はいかにあるべきか、本書に込められた中山氏の熱いメッセージを多くの読者に感じ取っていただきたい。同法の制定に僅かながらの関心を払ってきた私自身も、憲法にどう向き合うか、改めて考えるきっかけとしたい。
2008/11/10 南部義典