マリファナの合法化を求めたカルフォルニアの住民投票プロップ19は46対54で敗北した。実は、その時、私はニューヨークで中間選挙の生放送を見ていた。従業員がほとんどインド人のホテルロビーは音声を消した大型画面が注目を集めていた。大会場で熱狂的な支持者に囲まれた当選の議員がアクセプタンス・スピーチ(勝利者宣言)をぶち上げる。直後、カメラに向かって負けた候補者がコンセッション・スピーチ(敗北宣言)を大勢の聴衆に延々と続ける。日本なら敗北宣言もないし、劣勢が進むと潮が引くように人が減る事務所の風景とは全く違う。 この生中継が各選挙区の速報ごとに繰り返す。突然、日本で住民運動が浸透しない理由が頭に浮かんだ。米国民は選挙が大好きな国民である。一方、日本は国民の義務としての投票なのだ、と。派手に伝えられた保守派のティーパーティだけでなく、民主党も共和党も党員を核に草の根に降りて戦う。 住民投票が選挙と同時に行われるのも、議員を選ぶだけでなく、新政策や政策の変更を直接、選択する機会だということも感じ取れた。ロスアンゼルス・タイムズはプロップ19の続報で、合法化を推進する団体は12年を目標に再度挑戦すると伝えている。敗因については、民主党の大敗と同じように若者の動きが鈍かったという。 あのヘッジファンド王、J・ソロス氏が合法化運動に大口の寄付をしていたとの報道も「ホンマかいな」と考え込むしかない。が、各階層にそれぞれの意見があり、住民投票で決着をつける、また敗者復活戦がある、というのは悪いことではない。 住民投票後に出口調査型の意向聞き取り調査をやっていた。このあたりも国政選挙並みの関心の高さを裏付けている。[国民投票/住民投票]情報室の予測や結果についてのコメントがテレビの生中継に出る日を想像してみたが、プロップ19の推進団体のように勝利は「いつか」ではなくて「どうして実現するか」だと軽く断言してみたいものだ。日本の住民運動に無力感を感じるのは、時差ボケのせいだけではない。 フロリダの開発規制の強化を求めた住民運動は33対67で大敗した。環境の維持を優先する「ホームタウン・デモクラシー」は開発計画の策定、変更ごとに住民の意見を聞くように要求していたが、州全体では計画も修正も膨大な案件があり、いちいち選挙をやっていては多額の税金を浪費するという反対論に屈した。 開発計画の策定には地元や州政府の各段階で外部の意見や公聴会で意見聴取があり、住民の意見が無視されているわけでもない、という不動産業界などの反論もそれなりの支持を集めた。不動産バブルがはじけ、大量の住宅が住宅ローンの返済が延滞し、住宅の差し押さえ競売によるゴーストタウン化がフロリダでも広がっている。それでも住民投票では、開発に「ゴー」の答えが強く打ち出された。 1に雇用、2に雇用、3に雇用・・・日米ともに雇用、職場の確保に苦しんでいる。土地開発は確実に地元におカネが落ち、一定の雇用を生み出す。上下院選挙の最大の争点も景気、即雇用の回復だった。住民運動も結局は、景気に強い影響を受ける宿命にあるようだ。 ホテルの近くにオフィスの入居を訴える巨大な横断幕の掲げたビルがある。ビル前には、小雨が降る中で求職者の長い行列があった。道路には求職者が捨てたファーストフードなどのカップや紙が風に舞っていたが、10%近い失業率の厳しさが改めて迫ってきた。